黄色の顔料


-目次-

概説

□ 顔料の個別解説


概説

最も古くから使われている黄色の顔料はイエローオーカー(黄土)でしょう。19世紀になって化学の発展により、ようやくクロムイエローのような鮮やかな顔料が登場します。
現在使われている顔料はたくさんあるのですが、大部分は有機系の合成顔料です。アゾ系の顔料が非常に多く使われています。


色の名前と顔料

絵の具の名前の多くは顔料の名前に由来していますが、必ずしも一致するわけではありません。
ここでは自分の知る限りの範囲で実際使われている絵の具の名前と顔料の対比をしてみます。

絵の具の名前使われている/関連する顔料
イエローオーカーイエローオーカー
インディアンイエローアゾ顔料+ニトロソ系+イエローオーカー
オーレオリンオーレオリン
カドミウムイエローカドミウムイエロー
カドミウムオレンジカドミウムオレンジ
グリニッシュイエローグリニッシュイエロー
ジョーンブリヤンチタンホワイト+カドミウムイエロー、チタンホワイト+カドミウムレッド+カドミウムイエロー
ストロンシャンイエローチタンホワイト+アゾ顔料
ニッケルイエローニッケルイエロー
ネイプルスイエローチタンホワイト+カドミウムレッド、カドミウムイエロー+チタンホワイト+イエローオーカー
パーマネントイエローアゾ顔料+ニッケルイエロー
レモンイエローアゾ顔料+チタンホワイト


イエローオーカー [Yellow Ochre]

合成黄土: C.I.Name Pigment Yellow 42
天然黄土: C.I.Name Pigment Yellow 43

[説明]

いわゆる黄土色で茶色とも黄色ともとれる色です。が、ここでは茶色の方に詳しい説明を載せておきます。
天然の土を使ったものと合成品がありますがどちらも多く使われています。


オーレオリン [Aureolin]

C.I.Name Pigment Yellow 40

[説明]

1960年頃から水彩絵の具として使用されています。オーレオリンという名前の意味は「黄金色」で、そのすばらしい色彩に由来しています。なお現在では水彩絵の具には使われず、主に油絵の具として使われているようです。

[組成と製法]

コバルトを含んでいるためにカドミウムイエローと一二を争う、かなり高価な顔料です。しかしながら、オーレオリンは無機顔料で唯一の透明顔料であり。そのことだけでも十分価値があります。 彩度が高く、堅牢です。しかしながら耐光性はあまりよくありません。

[水彩絵の具]

水彩にも多く使われていたようですが、わずかに水に溶ける性質があることからチューブの中で固まりやすく、どうやらつかわれない傾向にあるようです。

[油絵の具]

オーレオリンは油絵の具としては、数少ない透明顔料で、耐光性に優れています。乾燥速度はコバルトを含んでいますが、普通程度です。
厚塗りしたときはからし色をしていますが、薄く塗れば鮮やかな黄色になります。
とくにオーレオリンはグレーズ技法に使うと。きれいな色になります。


カドミウムイエロー [Cadmium Yellow]

C.I.Name Pigment Yellow 37

[説明]

カドミウムイエローは19世紀中頃から使われるようになった顔料です。
カドミウムイエローは現在ではかなりポピュラーな色と言えるでしょう。
カドミウムイエローにはレモンイエロー調からオレンジ調まで様々な色調のものがあります。また、着色力は中程度です。
カドミウムイエローは耐光性に優れ、アルカリにも強いと言う性質を持っています。
カドミウムイエローは成分として硫黄を含んでいるためにシルバーホワイトと混合すると変色する可能性があります。が、質の良いものであれば変色は気にするほどではないでしょう。

[組成と製法]

カドミウムイエローはカドミウム塩溶液に硫化水素を通ずるか、硫化ナトリウムまたは硫化アンチモンを加えて作ることができます。 カドミウム系顔料は名前からわかるようにカドミウムを含んでいます。現在カドミウムの入手は困難で、現在日本以外では生産が不可能となっています。そのためこのカドミウムイエローの値段はかなり高くなっています。
合成中に硫酸バリウムを混ぜることによってカドモポン顔料が得られます。このカドモポン顔料は質の悪いカドミウムイエローでカドミウムイエローと書いてある絵の具で質の悪いものはこれになります。 亜鉛を添加することによってカドミウムイエローはレモン色になり(レモンイエロー)、セレン化物の添加により、赤みを増す。そしてオレンジ色をしたものをとくにカドミウムオレンジと呼びます。なお、セレン化物をさらにたくさん入れたものはカドミウムレッドになってしまいます。

[毒性]

カドミウムというものは毒性が強く、公害の原因(イタイイタイ病)ともなるほどです。このカドミウムイエローもカドミウム化合物として医薬用外劇物に指定されています。ちなみに致死量は50mg/kgで体重70kgの人なら3.5gで死ぬことになります。カドミウムレッドのように皮膚から吸収されることは少ないと考えられますが、危険ですので食べたりしないように。できるだけ直接手で触れないようにし、使用後は手を洗いましょう。

[油絵の具]

カドミウムイエローの油絵の具は不透明で、乾燥速度は遅い部類に入ります。
カドミウムイエローはその材料となるカドミウムの入手が困難になっているため、今後使用することが難しくなる可能性が高いでしょう。(外国では製造は中止、日本ではまだ作られています。)
強い色ですが、混色する相手によってはやや緑身を帯びる傾向があるようです。炭素系のブラックと混ぜると暗い緑になってしまいます。


カドモポンイエロー [Cadmium Yellow]

C.I.Name Pigment Yellow 35

[説明]

カドミウムの入手難のために高価なカドミウムイエローの代用品として使われています。


カドミウムオレンジ [Cadmium Orange]

C.I.Name Pigment Orange 20

[説明]

カドミウムイエローより赤みを帯びてオレンジ色を呈するものをカドミウムオレンジと呼びます。 性質はカドミウムレッドと同様です。

[組成と製法]

組成はカドミウムレッドとカドミウムイエローの中間です。

[油絵の具]


クロムイエロー [Chrome Yellow]

C.I.Name Pigment Yellow 34

[説明]

黄鉛ともいいます。この顔料が登場したのは19世紀はじめにで、合成顔料としてはかなり古いものです。
クロムイエローは色相の幅が広く、ある程度の着色力があり、安価です。現在のクロムイエローは昔に比べて耐光性が向上していますが、それでも耐光性は弱く、光によって徐々に暗色化します。また、硫化水素ガスにより黒く変色します。

[組成と製法]

組成はクロム酸鉛を主成分としています。
クロムイエローは鉛塩の溶液にクロム酸溶液を加えることによって得られます。

[油絵の具]

耐光性に欠けるという欠点のために絵の具としてこの顔料を使用しているメーカーは少なくなっているようですが、現在でも使用されてはいます。
クロムイエローは鉛を含んでいることから、乾燥速度の早い油絵の具になります。


ジンクイエロー [Zinc Yellow]

C.I.Name Pigment Yellow 36

[説明]

現在調査中!

[組成と製法]


ニッケルイエロー [Nickel Yellow]

C.I.Name Pigment Yellow 53

[説明]

ニッケルイエローはチタンイエローとも呼ばれます。
ニッケルイエローは新しい顔料で1946年にようやく工業化が始まっています。
この顔料は熱に対する安定性に優れていて、約1000℃まで耐えられます。その他耐光、耐アルカリ、耐酸、耐石灰性など優れた性質を持っています。まあ一言で言うと、顔料としての性能は文句無しといったところです。
ネイプルスイエローに比較して、鉛を含まない化合物であるため硫化水素の影響を受けることがありません。

[組成と製法]

化学組成はTiO2-NiO-SbO3の3成分系で、酸化チタンの結晶格子の中にニッケルおよびアンチモン原子を熱拡散させ、黄色に発色させた固溶体です。
酸化チタンとニッケル及びアンチモン塩を800℃近い温度で処理してつくられます。

[油絵の具]

この油絵の具は、透明度はほとんどなく不透明。油絵の具の乾燥は普通程度になります。
黄色としては特徴的な寒色で多量に使うと絵が冷たい感じになります。


ネイプルスイエロー [Naples Yellow]

C.I.Name Pigment Yellow 41

[説明]

ネイプルスイエローの歴史は古く、イタリアのベスビオス火山灰中から得られたことにより、中世から絵画に使用されています。
色調は組成によってレモン色から深い黄土色まで存在します。
ネープルスイエローは熱安定性が良く、また傑出した耐アルカリ、耐石灰性をもっています(そのためフレスコ画に使われた)が、硫化水素ガスや亜硫酸ガスで黒く変色するので注意が必要です。

[組成と製法]

ネープルスイエローは鉛とアンチモンの化合物で化学的にはアンチモン酸の鉛塩で、分子式もPb(SbO3)2あるいはPb3(SbO4)2に相当します。
色調は酸化鉛の含有量によって左右されます。
ネープルスイエローは現在は合成することが可能で、製品は600℃を越すカ焼方法で製造されます。

[油絵の具]

現在ネープルスイエローという絵の具は名前だけで、通常は他の顔料を混ぜ合わせて作られているようです。まれに本物も使われているらしいのですが筆者は見たこともありません。


アゾ系イエロー [AZO Yellow]

C.I.Name Pigment Yellow 3,14,55,83,152

[説明]

合成顔料として最もポピュラーです。
非常に多くのバリエーションがあるため、赤みを帯びた物から、黄色らしい色まで様々なものが存在します。

[構造]

アゾ系の化合物は非常に多くのバリエーションがありますが、アゾ化合物は下図のように2つの窒素原子の2重結合がフェニル基に挟まれた眼鏡のような骨格構造を持っています。

アゾ系顔料のなかにはこの骨格を二つもっているものがあり、これをとくにジスアゾと呼んでいるようです。
さらにこの骨格を数珠繋ぎにした縮合アゾ系顔料も作られていて、これはかなり優秀な顔料です。

[油絵の具]

アゾ系の顔料を使った絵の具はそれほど耐光性が強くないので、性能の低いものなら多少退色する可能性もあります。ただしアゾ系の顔料でも最近有力な縮合アゾ系の顔料は耐光性などの性能が向上しています。

縮合アゾ系イエロー

C.I.Name Pigment Yellow 95

[説明]

アゾ系顔料を改良したものです。

[構造]

アゾ顔料を縮合、すなわち数珠繋ぎにして巨大な分子にすることで性能を向上させています。

[油絵の具]

アゾ系の顔料を使った絵の具はそれほど耐光性が強くないので、性能の低いものなら多少退色する可能性もあります。ただしアゾ系の顔料でも最近有力な縮合アゾ系の顔料は耐光性などの性能が向上しています。


グリニッシュイエロー [Greenish Yellow]

C.I.Name Pigment Yellow 117

[説明]

グリニッシュイエローを日本語に直訳すると「緑みを帯びた黄色」で、たしかにその通りですが、濃い状態ではやや暗めの緑色に見え、薄めると美しい黄色になります。
緑みを帯びた黄色ですが、とくに冷たさは感じさせません。
グリニッシュイエローは堅牢な顔料です。

[構造]

グリニッシュイエローの構造は下のようになっています。

すなわち銅を含んだ錯塩構造が特徴になっています。

[油絵の具]

グリニッシュイエローは透明度が低く、乾燥速度の遅い油絵の具です。
薄く塗ったときにきれいな色を出すのでグレーズなどの技法に向いているのではないかと思います。
一見した印象と使ったときの感想があまり一致しない感じがあります。


ピラゾロン系イエロー [Pirazolone Yellow]

C.I.Name Pigment Yellow 100

[説明]


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