茶色の顔料


-目次-

概説

□ 顔料の個別解説


概説

一概に茶色と言っても、赤みを帯びたものから、黄色に近いものまでいろいろな茶色がありますが、どうも茶色の顔料の名前はこの色はこうとはっきりと決まっていないようでちょっとやっかいです。同じ名前の顔料でも、メーカーによってちょっと色が違っているというようなことが見られるようです。
茶色の顔料の大部分はいわゆる「土」です。そしてその土の色を決めているのは主に鉄でさらにマンガンや珪素などの成分によって変化します。
現在天然のものと、合成品の両方が使われています。


色の名前と顔料

茶系の絵の具はそのほとんどが土顔料を使ったもので、顔料の名前がそのまま使われていますが、原料が手に入らないときに他の顔料を混ぜ合わせて作る場合もあるようです。
土系の顔料はその産地の名前が使われることがよくあります。


天然土顔料 [Natural Earth Pigments]

C.I.Namw Pigment Brown 7

[説明]

アンバーシェンナテールベルトなどは自然に産出する土性顔料で、歴史的な見地からすれば、これらの天然土顔料は最古の顔料だと考えられます。
天然に存在することからもわかるように、安定な物質で、様々な用途に使えます。
天然土は合成土顔料に比べて、珪酸化合物などの雑多な成分を含むため着色力、隠蔽力は弱くなります。

[組成と製法]

土性顔料の色を決定している成分は主に水和酸化鉄、酸化鉄、マンガンなどです。
その他珪素やアルミウムの酸化物を含んでいますがこれらは透明です。

[油絵の具]

とくに天然土と合成品を区別していないメーカーもありますが、カラーインデックスを見れば区別することは可能です。
天然土は合成土性顔料と比べると色が弱いので、どちらかというとグレーズなどの技法に向いていると思われます。


アンバー [Umber]

C.I.Name Pigment Brown 7

[説明]

16世紀頃から絵画に使用されています。ローアンバーとバーントアンバーの二つが含まれ、どちらもマンガンを含んだ黒っぽい顔料です。とくに緑身の強いものをグリニッシュアンバーとも呼ぶようです。


ローアンバー [Raw Umber]

C.I.Name Pigment Brown 7

[説明]

マンガンを含んでいるので、黒っぽい色をしています。産地により緑みの強い種類があります。

[組成と製法]

酸化鉄、酸化マンガンを主成分としています。

[油絵の具]

マンガンを含んでいるので乾燥がとても速い絵の具になります。多少の緑みがあるのが特徴的です。多少ぱさぱさしたところがあります。


バーントアンバー [Burnt Umber]

C.I.Name Pigment Brown 7

[説明]

焼いたアンバー。ローアンバーを焼いたものです。 着色力がつよい顔料です。

[組成と製法]

酸化鉄、酸化マンガンを主成分としています。

[油絵の具]

マンガンを含んでいるので乾燥のとても速い絵の具です。


イエローオーカー [Yellow Ochre]

合成黄土: C.I.Name Pigment Yellow 42

天然黄土: C.I.Name Pigment Yellow 43

[説明]

黄土と呼ばれます。天然のものと合成品が存在します。
イエローオーカーで少し赤みを帯びたものをゴールドオーカーと呼びます。

[油絵の具]

合成品の方が着色力が強くて粒子が細かく、天然品の方が透明度が高くてややぱさぱさしています。


ヴァンダイクブラウン [Vandike Brown]

[説明]

17世紀から使用されている顔料で、その名前は画家ヴァンダイクに由来しているようです。

[組成]

ヴァンダイクブラウンは天然に土として得られ、
フミン酸という有機物を多量に含んでいます。その他に鉄、アルミナ、シリカなどを含んでいます。

[油絵の具]

ヴァンダイクブラウンはぱさぱさとした感じの油絵の具で、バーントアンバーよりもさらに黒っぽい褐色です。
乾燥はやや遅い部類に入ります。


シェンナ [Sienna]

C.I.Name Pigment Brown 7

C.I.Name Pigment Yellow 43

[説明]

シェンナという名前はイタリアのトスカーナ地方の都市シエナに由来しています。
そのままの土を用いたローシェンナとそれを焼いて得られるバーントシェンナがあります。


ローシェンナ [Raw Siennna]

C.I.Name Pigment Yellow 43

[説明]

生のシェンナ。イエローオーカーとよく似た顔料ですが、やや黒ずんでいます。
透明度が高いという特徴があります。

[組成]

天然の土が使用されています。
主成分は水和酸化鉄Fe2O3・H2Oで、コロイド性ケイ酸を含んでいます。少量のマンガンを含んでいる分、黄土より多少黒っぽい色をしています。

[油絵の具]

マンガンを含んでいますが、普通はごく少量のため乾燥は速くはありません。
その透明度を生かしてグレーズ技法に使われます。


バーントシェンナ [Burnt Sienna]

C.I.Name Pigment Brown 7

[説明]

焼いたシェンナ。焼かれて赤みを増しており、赤茶色をしています。

[組成と製法]

ローシェンナを焙焼して得られます。
赤いのは酸化第二鉄Fe2O3のためです。

[油絵の具]

やや赤みの強い茶色です。


べんがら [Indian Red]

合成弁柄: C.I.Name Pigment Red 101

天然弁柄: C.I.Name Pigment Red 102, 6

[説明]

漢字で書くと弁柄もしくは紅殻。最初インドのベンガル地方産のものを輸入したために「べんがら」と名付けられたようです。
ベネシャンレッド、マルスレッド、インディアンレッド、レッドオーカー等様々な名称があります。
絵の具としては鮮やかさにはかけますがいろいろ役に立つ顔料です。

[組成]

酸化第二鉄Fe2O3を主成分としています。
原料と製法により様々な色調の物が得られます。


セピア [Sepia]

[説明]

セピアとは「イカ墨」のことで、また黒に近い褐色のことをさしています。
昔貧乏でインクを買えなかった人が使ったそうですが、悪臭と日光によりすぐに色が褪せてしまうことに悩まされたそうです。
ちなみに「セピア色」とはセピアが退色して薄い褐色になった状態を指します。

[組成]

セピアの主成分は「メラニン」という色素です。みなさんが日焼けすると皮膚中で増える色素です。
いかを捕まえてその「すみ」を得ます。

[油絵の具]

腐ってしまうので、いかのすみは使えません。セピアという名前でも褐色と黒の顔料を混ぜて作られています。混ぜた顔料次第で性質が変わりますが、アイボリーブラックが混ぜられていると乾燥速度は遅くなりがちなようです。


戻る