黒の顔料


-目次-

概説

色の名前と顔料

□ 顔料の個別解説

  1. 無機顔料
  2. 有機顔料

概説

理想的には黒の顔料は全ての波長の光を吸収することになりますが、実際はそんなことはなく黒にも色があります。これはホワイトと混ぜて、灰色を作って較べてみるとそのわずかな差がわかりやすくなります。


黒は不要 ?

黒の絵の具を嫌う人はけっこう多いようです。黒の絵の具を不用意に混ぜると暗い絵になってしまうことがその一番の原因のようです。かつて印象派の人々は黒を使って影を表現することを嫌ったようです。そういった人々は色彩理論にしたがって複数の色を組み合わせて黒を作るわけです。
さらに油絵の具では黒は乾燥の遅い絵の具なので、その点でも嫌われます。
しかし一方でかなり積極的に黒を使う人もいます。「完全な黒」は黒の絵の具を使わざるをえないからです。ようするに「黒の絵の具」以上の黒は作れないということです。


色の名前と顔料

絵の具の名前の多くは顔料の名前に由来していますが、必ずしも一致するわけではありません。
黒の絵の具においてはとくに顔料による色の名前の区別がなされないことも多く、単純に黒としか呼ばれないことも多いようです。これは色の違いが認識しにくいためだと思います。

黒の絵の具を色の違いから名付けることは不可能なので、色の名前は当然顔料の名前、原料の名前となります。
絵の具の名前使われている/関連する顔料
アイボリーブラックアイボリーブラック
アニリンブラックアニリンブラック
カーボンブラックカーボンブラック
バインブラックバインブラック
ピーチブラックピーチブラック
ランプブラックランプブラック

□ 炭素と黒

黒の顔料は、そのほとんどがいわゆる「炭」で元素名でいえば「炭素(C)」です。色を決めているのは炭素ですが、その性質は粒子の細かさ、それから炭素以外の成分によって変化します。
炭に含まれるような炭素は不定形炭素と呼ばれていて、どんな形をしているのかはちょっと複雑ですが、その複雑さが多くの領域の光を吸収する理由となっています(単純な分子では単色の光しか吸収できない)。
炭素の粒子がきわめて細かいものは黒ではなくて茶色っぽくなります。
油絵の具としては乾燥がかなり遅いという問題がありますが、一般的に非常に安価な顔料でしかも色の性能はよいので広く使われています。


アイボリーブラック [Ivory Black]

C.I.Name Pigment Black 9

[説明]

アイボリーブラックの名前は、その昔象牙を燃やして作っていたことからきています。が現在はその代わりに骨を燃やして作っています。
アイボリーブラックに含まれるリン酸カルシウムの(CaPO4)ために、カビが生えやすいので保存には注意が必要です。

[組成と製法]

現在でも象牙を燃やして作ったものが高級品であるわけですが、普通はそんな高価なものは使えないので、動物の骨を燃やして作っています。
アイボリーブラックは炭のほかにリン酸カルシウムを含んでいます。実はこのリン酸カルシウムが炭素の黒をより強くしています。

[油絵の具]

アイボリーブラックは強い黒です。
その色の強さはリン酸カルシウムのためですが、そのリン酸カルシウムが油の固化速度を遅くする(負触媒作用)ために、アイボリーブラックは極端に油絵の具の乾燥を遅くします。
アイボリーブラックを使うときは、シッカチフを使って乾燥を速めたほうが賢明かもしれません。


アニリンブラック [Aniline Black]

C.I.Name Pigment Black 1

[説明]

安価で堅牢な染料です。

[構造と製法]

アニリンの酸化重合で得られます。


カーボンブラック [Carbon Black]

C.I.Name Pigment Black 7

[説明]

カーボンブラックという名前は広い意味で炭素を含む顔料の総称になります。したがって広い意味ではアイボリーブラック、ランプブラックなどもすべてカーボンブラックになります。
狭い意味ではカーボンブラックはチャンネルブラックやファーネスブラックなど超微細カーボンブラックをさします。
これらのカーボンブラックは炭素含有量がたかく、チャンネルブラックは10nmという微細粒子で、ファーネスブラックはそれより粒子がやや大きくなります。
カーボンブラックは漆黒度と着色力に優れた顔料です。

[組成と製法]

天然ガスや石油を不完全燃焼させて得られます。チャンネルブラックは原料が天然ガス、石油を用いるのがファーネスブラックで、チャンネルブラックの方が粒子が細かくなっています。

[油絵の具]

かなり使われているとは思いますが、カーボンブラックという名前では売られていないかもしれません。乾燥を遅らせる作用があるようです。


ピーチブラック [Peach Black]

C.I.Name Pigment Black 8

[説明]

植物を炭にした物にはいろいろ名前があって、それらは原料の名前で区別されています。
チャコールグレイというのは木炭という意味です。
バインブラックは葡萄の蔓や樹木を原料にしたものです。

[組成と製法]

植物を燃やして得られます。

[油絵の具]

透明性が強く


マルスブラック [Mars Black]

C.I.Name Pigment Black 11

[説明]

有名ではありませんが、黒の顔料です。

[組成と製法]

酸化鉄Fe3O4を主成分としています。


ランプブラック [Lamp Black]

C.I.Name Pigment Black 6

[説明]

いわゆるランプのすすです。
カーボンブラックに次いで着色力が高い黒の顔料です。製造段階で混入する油分を含んでいるのが特徴です。
足色に青みを持っています。

[組成と製法]

油を不完全燃焼させて製造されます。
ちなみに、いわゆる墨の最高級品は菜種油を燃やして得たすすから作らています。

[油絵の具]

透明性が特徴です。


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