自己流ですがベニヤ画法を紹介します。
目次
□ ベニヤ板に描く
ルネサンス時代より前はキャンバスは存在せず、絵は板に描かれていました。
やがて絵画用の板の材料となる大木が枯渇すると、木板より軽くて大画面向きのキャンバスが発明され、多量生産されるようになりました。軽いキャンバスは野外制作の一因ともなります。
ところで、近年の木材の枯渇を解決するため、少ない木材から広い板を得る方法としてベニヤ板が開発されました。
ベニヤ板の製法は茹でて柔らかくした木材をいわゆる「かつらむき」にし、その薄い板を交互に重ね、接着剤を間に塗って圧力をかけて張り合わせるというものです。
現在では技術も向上し品質のよいベニヤ板が生産されています。ここで、ベニヤ板を絵の支持体として利用するという選択肢が生まれたわけです。
板に絵を描こうとしても大型の木の板は高すぎて手が出せませんが、ベニヤ板は非常に安価で、場合によるでしょうが、キャンバスより安くつきます。欠点も目に付きますがキャンバスに十分対抗できる選択肢であると私は勝手に信じています。
□ ベニヤ板の利点
私が元々ベニヤ板に描き始めた理由は金銭的問題で、ベニヤ板に描けばコストが安くつくからです。昔、学生たちがよく使ったらしいです。私の先輩にはいたのですが、後輩でベニヤに描く人はほとんどいません。
ほかになにか長所があったかな?。そう、サイズが比較的自由に変えられるということは利点の一つです。180cm x 45 cmのパノラマを描くとか、市販のキャンバスにはないサイズで描くことができます。さらには描いている途中でサイズを小さくしたいときも、鋸で切り落とすだけです。その逆が簡単にできないので注意が必要ですが。
布の目が嫌いで平面を望む人には向いているかも知れません。
あとは、キャンバスと違ってベニヤ板はしっかりしていて、描いているときに筆を押しつけても表面が曲がることがないことですが、これは好みの問題でしょう。
□ ベニヤ板の欠点
ベニヤ板に描く欠点は意外と多いので注意が必要です。
ベニヤ板で[180cm x 90cm]のサイズを超える場合、ベニヤ板を接がなければならないので処理が大変です。この場合裏に板を打ち付ける必要があるのですが、面倒だし、重量が大きくなってしまいます。
とくにベニヤ板で大型の絵を描くとキャンバスと比べて重くなります。とくに板が厚くなると大変です。キャンバスより重いので持ち歩く必要のある野外制作には不適当でしょう。
ベニヤ板そのものが歪んでしまうという現象も問題です。絵が歪んでしまってはお手上げですね。
ベニヤ板は堅くて沈まない分、筆の摩耗速度が若干速くなるかも知れません。
自由なサイズにできるのはいいのですが、その場合は額の調達で苦労することになります。額を自分で作らないと最終的なコストがかさんでしまう結果になってしまいそうです。
欠点だらけじゃないか。
□ ベニヤ板の選択
工務店、ホームセンターなどにいけば様々な種類のベニヤ板を買うことができます。
いろいろな種類のベニヤ板がありますが、とくに表面が加工してあるベニヤ板を選択する必要はありません。むしろ加工で表面がつるつるしているとあとで絵の具を上に塗るときにはげやすくなってしまいます。
ベニヤ板の材質は特に気にする必要はないでしょう。板の堅さ、曲がり易さなどに影響は出るでしょうが、値段と好みで選んでかまわないと思います。
ベニヤ板を横から見てみると3枚重ねのものと5枚重ねのものがあるのが分かります。でどちらが絵画用に適しているか考えてみると、5枚重ねの方が丈夫で歪みにくく、平面が維持されやすいのですが、3枚重ねの方が薄くて軽い。5枚重ねだともっとも薄いものでも6mmくらいにはなるのでその分重くなってしまいます。
ここで相反する二つの理由のためにバランスをとる必要がありますが、小さな絵の場合は丈夫で平らな5枚重ねのベニヤ板、大きい絵の場合には3枚重ねのより薄い板が適しているのではないかというのが私の結論です。
それから、割れ目がなく穴があいていないものをよく選んでおきましょう。割れ目や穴の処理は面倒です。
□ ベニヤの前処理
店によっては処理してくれていることもありますが、そうでないときは割れ目や小さな穴は下地を作る前に処理しておいた方がいいでしょう。
木材用の隙間充填剤が市販されているのでそれを埋め込みます。埋め込みの段階で適当な板などを使って表面をなだらかにしておけば乾いてからサンドペーパーをかける必要はほとんどありません。
ちょっとした歪みは平らな面におくか、数枚重ねて上から重しを乗せておくとかなり良くなります。平らな壁に立てかけてうまく押さえつけてもいいでしょう。
歪みがひどいときは、水を塗ってから乾燥させると直すことができます。注意しなければならないのは水を塗る面で、水を塗った側が乾燥したときに縮むことを考えて塗らないと歪みがよけいひどくなってしまいます。
□ 下地塗り
ベニヤ板に関わらず、木材の主成分は「セルロース」という物質なので、木や紙の上に直接油絵の具で描くと油のせいでセルロースが劣化するために木や紙はやがてボロボロになります。それを防ぐために木材と絵の具を直接ふれないようにする必要があるのですがそれには二つの方法があります。
まずベニヤ板に絵の具を塗る前に「にかわ(膠)」を塗っておく方法で、古くから使われている方法です。
まず膠を水に溶かさなければならないのですが、これがなかなか溶けません。
最初に膠を適当な瓶の中へ水とともに入れ、しばらく「ふやかす」必要があります。実はこの作業が最も重要です。面倒ですがちゃんと時間をかけてください。
次に湯煎(80度)でゆっくりと温度を上げながらかき混ぜて溶かしてやると溶けていくのですが、私は面倒なので電子レンジでちょっと(一瞬)加熱して溶かしてやります。これは簡単ですが温度を上げすぎないように注意。温度を上げなくても溶けます。
膠を溶かしたら、そのまますぐにベニヤ板の表面に塗ってやります。一度塗った後一度乾かしてから二度塗りしてやると完璧です。
膠が完全に乾いたら、次に下地用の油絵の具をぬって乾かしてやります。特に下地用の絵の具が売られているのでそれを使うのが一番いいようです。下地の絵の具は粒子が粗い(ざらざらしている)方が絵の具の「のり」がよくなります。
また、基本は白ですが好みで色を選択してもよいでしょう。下地の絵の具に色を混ぜてやると簡単にいろがつきます。
その下地の油絵の具の具合によっては、乾燥させてから二度塗りをしてやる必要があるかも知れません。ベニヤ板の場合木目があるためにたいてい一度ではきれいには塗れません。でも面倒で時間がないなら仕方ありませんし、その上に絵の具を塗る訳なので気にしなくても構わないかもしれません。
アクリル性の下地剤が「ジェッソ」の名前で市販されているのでこれを使う方法が楽です。使い方は簡単ベニヤ板にアクリル性の下地用絵の具を塗るだけです。非常に簡単なのでおすすめです。
乾いた後には普通に油絵の具で描くことができます。
□ ベニヤ板の保管
ベニヤ板は水分をすって乾燥するときに歪んでしまうことがあります。また濡れるとベニヤ板の接着剤が溶けだしてベニヤ板がはがれてしまうことがあるので、湿り気の多い場所には保管しない方がいいでしょう。少なくとも濡れることは避けるべきです。
また虫にも気を付けなければいけません。
押し入れに保管していてもたまには風を通してやるといいでしょう。そうキャンバスと保管方法が違うわけではありませんね。